スパダリ救急救命士は、ストーカー被害にあった雑誌記者を溺愛して離さない~必ず君を助けるから。一生守るから俺の隣にいろ~
 必死で消火活動がされているマンションの横で、大久間と虎二郎がそれぞれ連行されていく。

「ルカちゃん、助けてよ。俺のこと好きだろ?」
「あなたを好きだったことなんて一度もないです」
「なんで? 俺はルカちゃん好きなのに」
 ……意味がわからない。
 自分が好きだったら相手も自分のことが好きってこと?

「なんでもプレゼントあげるし、別荘もあるし、絶対楽しいよ。ねっ、こいつらに離すように……」
「私、たくましくて優しくて守ってくれる蓮さんが好きなの。こじろうくんは全然好みじゃないからごめんなさい」
「俺よりいい男なんているわけねぇだろ!」
 にっこりお断りした瑠花に虎二郎は逆ギレする。

「じゃぁ、なんでさっき俺のこといろいろ聞いたんだよ! 好きってことだろ?」
「あなたとあなたのお父さんを逮捕する証拠が欲しかっただけ」
「はぁ? なんだよ、それ!」
 警察官に連行されながら虎二郎が悔しそうな顔で睨んでくる。

「俺は政治家の息子だぞ! こんなことしてタダで済むと思うなよ!」
 虎二郎は政治家の息子というだけでなんでも欲しいものが手に入って、なにをしても許されて、周りの人が気を遣ってくれる生活しか送ったことがないのだろう。
 やってはいけないことの区別もわからないまま大人になってしまったんだ。
 それでもマンション放火までして、みんなの命を危険にさらしたことはなかったことにはできない。

「そこの男、絶対許さないからな! 俺のルカちゃんを取りやがって!」
 虎二郎の逆恨みの標的になった蓮はジロッと虎二郎を睨み返した。

「瑠花は俺が幸せにするから安心して罪を償え」
「うるさい! うるさい!」
「瑠花は俺が一生守る。瑠花に怪我をさせたお前のことは俺も絶対に許さない」
「ほら、歩け」
「くっそ、覚えてろよ!」
 警察官にグイグイ押された虎二郎は騒ぎながら連行されていく。

 瑠花は魂が抜けたような顔でパトカーに乗せられる大久間の写真、暴れながら乗せられる虎二郎、燃えたマンション、消火活動中の消防士たちの写真を蓮に撮ってもらった。

「すみません! どなたか医療関係者はいらっしゃいませんか?」
 消防士の声に蓮は振り返る。

「蓮さん、行って」
「でも、瑠花が」
「私は凜さんと記事を書きながら待っているから大丈夫」
 ねっ、と微笑むのと同時に蓮の熱い口づけが落ちてくる。

 待って、ここ、みんなの前!

「行ってくる」
 ペロッと舌なめずりまでしたくせに、耳まで真っ赤にした蓮は走って去って行ってしまう。
 自分だけがここに残され視線を浴びることになった瑠花は真っ赤な顔を隠したかったのに、左手に握ったスマホのせいで全く隠すことができなかった。
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