スパダリ救急救命士は、ストーカー被害にあった雑誌記者を溺愛して離さない~必ず君を助けるから。一生守るから俺の隣にいろ~
「熱いわ~」
 手でパタパタと顔をあおぎながらからかってくる凜に連れられながら瑠花は木陰へ。

 凜に音声入力に設定してもらった瑠花は、膝の上にスマホを置いて夢中で書いた。
 記者の名前はRS、三条瑠花だ。
 マンションの火災は事故ではなく火炎瓶を投げた者がいると、虎二郎の名前は書かずに投稿した。

 駅直結ビルのせいか、電車を利用している人たちからすぐに「その火事見た」「煙がやばい」「電車止まってる」とレスが付いていく。

 次は大久間の選挙カーと消火活動中のマンションを一緒に写真に収め、火災現場に大久間が来たこと、有権者に水を配ったことを書いた。
 この記事に「選挙違反では?」と凜がレスをつけると、すぐに拡散していく。

 次は消火活動中の消防士さんたちの写真を凜に撮ってもらった。
 はしご車で救助してもらった感想を書くと「無事でよかったね」と優しいレスをもらえてうれしかった。

 パトカーに乗る虎二郎の写真を左手だけで加工するのは難しかったが、なんとかボカし、顔がわからないようにすることができた。
 写真を添えて、マンションに火炎瓶を投げた男はパトカーで連行されていったと投稿すると、犯人が捕まってよかったと安堵のレスが広がった。

 上空の消火ヘリから消火剤が放出される写真も撮ってもらい、投稿する。
 蓮が応急処置してくれたTシャツを三角巾代わりにした写真も凜に撮ってもらい、Tシャツが応急処置に使えることを書いた。

 救急車で重傷者から運ばれて行き、軽症の人もどんどん治療されていく。
 瑠花はこっそり小さな子どもを手当てしている蓮の姿も写真に収めた。
 これは個人で楽しむ写真だけれど。

 マンションの火はまだ消えていないけれど、先ほどよりも黒い煙は減った気がする。

「瑠花、お待たせ。足と肘、治療させて」
 救急箱を持った蓮に声をかけられた瑠花は、白衣姿にドキッとした。

「蓮さんは救急車に乗って行かなくてもいいの?」
「非番の日は医療行為ができないんだ。手伝えるのはこの程度」
 包帯を巻いて固定したり、消毒してあげるくらいしかできないと言いながら蓮は水を手に取り、瑠花の腕へ。

「少し沁みるよ」
 沁みると予告されていたのに、擦りむいた肘の血を洗い流してもらった瑠花は「うっ」と思わず声が出てしまった。
 こんな激しい擦り傷なんて、小学生以来?
 このあとあの消毒液をここに?
 それってすごく沁みるやつだよね。
 
「沁みるから、消毒液は嫌だなって思ってる?」
「……思ってる」
 正直だなと笑いながらガーゼと消毒液を手に取る蓮を見た瑠花は、やっぱり消毒するんだと情けない顔で蓮を見つめた。

「そんな顔は反則」
 笑いながらキスをされた瑠花は真っ赤な顔に。

「ちょっと弁護士事務所に電話してくるわ~」
 逃げるように席を外した凜に、瑠花と蓮は顔を見合わせて笑った。
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