恋愛短編集10作品

思わず周りを見渡す俺に、彼女は手を伸ばしてきた。
殴られる?
身構え、ぎゅっと閉じた目。
緊張した俺の頬に、そっと触れたのは冷たい手。
「あなたは、私を好きじゃないから。付き合うのは嫌。」
目を開けた俺に突き刺さる視線と、正論。
彼女の手が離れ、冷たく感じていたはずなのに、頬に熱が生じていく。
図星が恥ずかしかったからか、それとも理由の分からない何か。
知りたくなる。
もっと星崎の事、そして人を好きだと言う気持ちを。
「誰かを好きになった時、どうすれば分かる?その気持ちが自分では理解できないのに、相手は信じてくれるかな?」
星崎は微笑んだだけで、答えはくれなかった。


「で、どうなった?」
「私と瑠々ちゃんは、友達になれるのかな?」
次の日、朝から矢継ぎ早に質問攻め。
おいおい、昨夜は何も尋ねなかったくせに。
「ん?ふふふ。昨日の俺達の事が知りたいのか?」
察した俺は、視線を逸らして教室に目を向ける。
まだ彼女は来ていない。
「朗、私たちの事はまだ村島君には毒だよ。焦って瑠々ちゃんに手を出せば、私とのお友達計画が崩れちゃう。」
俺が焦って手を出すって、何か犯罪の匂いがしますね。
そんなに信用がないのかな?
「航平君は、ムッツリだからねぇ~。自覚がない分、厄介だよ。」
一応、親友(?)の男が俺の評価を述べているわけで。
誰かを好きになりたいと、純粋だと思いたいのは確かなのだけど。
お年頃。やっぱり、自分とは違う体の女の子に興味がありますよ。
じっと背の低い吉田を見下ろす俺に、朗は肘鉄。
「ぐふぅ。」
痛みに、腹を押さえながら睨んでみるけれど。
「何を思ったのか、正直に言えば許してやるよ?」
かなりのご立腹。
睨みを返され、俺は視線を逸らした。
「良い匂い。小さくて、柔らかそうだなぁ~と思いました。」
正直に言ってみる。
そして目を向けると、朗は俺に悲しそうな表情で涙ぐむ。
「お前、いつからそんな正直者になっちゃったの?」
何だか疲れてしまって、深いため息が漏れた。

「朗は、吉田のどこが好き?」
知りたい。好きと言う感情。
どうすれば、それは恋になるのか。
「え~、全部!」
まったく参考にならない答えだな。
「じゃぁ、吉田は朗のどこが好きなわけ?」
「ん~?全部、大好き!」
並んだ二人は、幸せそうな笑顔で答える。
全部って何?きっと聞いても分からないだろうな。
俺は、朗と友達でいるけど全てを知ってるわけじゃない。
それでも一緒に行動して、会話して、嫌いじゃないから。
好きかと聞かれれば、答えに困る気恥ずかしさ。

「おはよう、瑠々ちゃん。今日から私と友達になってくれるかな?」
おいおい、暴走してんぞ吉田。
「良いわよ。」
何故に?
吉田とは違う静かな雰囲気の彼女が、友達指名に安易な合意。
「やった~。じゃぁ、もう村島君は不要で。」
おい。待て。
「良かったなぁ~、ハナ。これで俺への八つ当たりはやめてくれる?」
「それとこれとは話が別。」
全部好きだと言ったのに、険悪さと微妙な雰囲気はあるわけで。
やっぱり俺には理解できないのかもしれない。
「おはよう。」
彼女の頬が、少しだけ赤く見えた気がして。
俺の何かが反応した。
くすぐったいような、嬉しくて笑顔になってしまう。
そんな淡い気持ち。
「おはよう、星崎。あのさ、今度の休み……」


あの時、君と目が合ったのは。
俺が、君に気づいていたからなんだ。本当は。


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