私は今日も、そらを見上げる。

すぐ近くの海で、歩いて行ける距離だった。もうすっかり空は暗くなっていて、ほんのりと星が輝いている。
月が光り、鈴虫が鳴く。秋が近づいてくるのを感じた。まだ残暑は続いているけど、風は涼しくなってきている。

現在の時刻は七時二十分。八時に花火大会が始まるまで、蒼空と海を見る予定だ。


もうすぐ海に辿り着きそうだ。

遠くから見ると、海には数名だけ人が集まっていた。田舎だし、それほど知名度もないのだろう。でも、人がいない方が花火もよく見えそうだし、好都合だ。

広い海の砂浜に立つ。海が空を反射して蒼く染まり、月の光が海を白く照らす。静かな夜に澄んだ波の声が心地よかった。

「美雲!」

肩をトントンと叩かれ、後ろを振り向いた。

「あ、蒼空」

少しダボッとした白いTシャツに、黒いスカート。そして花の形をしたシルバーのイヤリング。

蒼空の優しい雰囲気にピッタリで、似合っていた。

「結構人いないんだね」

風が、蒼空の黒髪とイヤリングを揺らす。

「意外とねー」

「今日はカメラ持ってきたから。ほら、デジカメ」

蒼空がデジカメを取り出して、笑みを浮かべる。カメラとか、私は使ったことが全くない。
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