野いちご源氏物語 〇五 若紫(わかむらさき)
若紫(わかむらさき)(きみ)にお仕えする女房(にょうぼう)女童(めのわらわ)が、少しずつ二条(にじょう)(いん)に集まってきていた。
女童たちは姫君(ひめぎみ)のお遊び相手をするのだけれど、堅苦しいご主人たちではないので、のんきに楽しそうに遊んでいる。

姫君は源氏(げんじ)(きみ)がいらっしゃらない夕暮れ時などには、まだ尼君(あまぎみ)を恋しく思って泣かれることもある。
でも、父宮(ちちみや)のことはとくに思い出しもなさらない。
もともとめったにお会いにならないご関係だったから、今では源氏の君を父親だと思ってすっかりなついていらっしゃるの。

源氏の君がどこかからお帰りになると、まっさきにお迎えにあがられる。
楽しくお話をして、源氏の君の腕に抱かれても少しも嫌だとも恥ずかしいともお思いにならない。
源氏の君にとって姫君は、気楽な遊び相手になってしまわれたの。

大人の女性が相手だと、こうはいかないでしょう?
嫉妬(しっと)されたり面倒なことになったり、そしたら男性だって「思ったのと違うな」なんて距離をとろうとするし、そうすれば女性は(うら)んで()(ごと)になるじゃない?

この姫君はそういう心配がいらないの。
実の娘であっても、このくらいの年齢になればこれほど父親にべったりということはない。
だから、恋人とも実の娘とも違う、不思議な関係だと源氏の君は思っていらっしゃった。
< 18 / 19 >

この作品をシェア

pagetop