The previous night of the world revolution4~I.D.~
「俺もそう思ってな、図書館に行って調べてみたんだよ」

と、ルリシヤ。

チラシを裏返して、黒いペンでさらさらと家系図を書き始めた。

「現国王より前の三代は、確かにヘールシュミット家が王位を継いでる。先王はアシミムの父親だし、その前の王はアシミムの祖父、更にその前はアシミムにとって曾祖父に当たる人物だ」

ずっと直系の男子が王位を継いできたってことか。

「でもアシミムの曾祖父より前の国王。これはトレギアス家の当主なんだ」

「トレギアス家の…?今の国王…ミレドの先祖か」

「そう。ミレドにとっては…曾祖父の兄、難しい言い方をすると…曾祖伯父だな」

…滅多に使わない続柄だな。

「で、ミレドの曾祖伯父の前は、その父親。ミレドにとっては高祖父に当たる。その前もその父親が王位を継いでる」

「…その前は?」

「その前は、またヘールシュミット家が王座についてる。二代ほどな。で、それより前はまたトレギアス家だ」

…成程な。よく分かった。

「つまり、シェルドニア王家は、ヘールシュミットとトレギアス、二つの家のうちどちらかの当主が、代々王位を継いできたってことだな?」

「分かりやすく言うとそういうことだな。ほとんど常にベルガモット家一択のルティス帝国王家を見習って欲しいものだ」

…全くだよ。

二つの王家が、代々王位を争ってきたのか。

ヘールシュミット家が勢力を増したときはヘールシュミット家が何代か、玉座に座るが。

ヘールシュミット家の勢いが衰え、トレギアス家が勢力を増せば、玉座を奪って、また何代か玉座に座り。

トレギアス家の勢力が弱まったら、またヘールシュミット家が玉座を取り返し…という不毛な応酬を、何百年、何千年と繰り返してきたのだ。

…この国が、今のような洗脳システムを作り出した理由が、少し分かった気がする。

玉座に座る者が替わる度、国民は振り回され、そして怒りを募らせたはずだ。

箱庭帝国ではないが、放っておけば王族をまとめて打倒する為に、ルアリスのような人物が革命軍を指揮していたかもしれない。

だからこそ、洗脳によって国民を黙らせ、その間に自分達は王位を求めて、不毛な王位継承争いを繰り返しているのだ。

…それに巻き込まれる方は、堪ったもんじゃないな。

国内だけでやってるなら、まだ良い。

今度は、異国人である俺達まで巻き込みやがった。

最低最悪のクズ共だ。

ルレイアを傷つけやがったベルガモット王家のローゼリア元女王だって、糞食らえと思っていたが。

こいつらは、それより更に酷い。

「…でも、それでアシミムがミレドを暗殺しようとしてる理由が分かったな」

「あぁ。アシミムのように…王位を継ぐ家が『入れ替わる』時期に当主になった者は、割を食うだろうな」

特に、父親が王位を継いでいるのに、自分の代からもう片方の家に王位を奪われた、アシミムのような者は…不運だな。

だからって、他人を巻き込んで良い理由にはならないが。

「馬鹿馬鹿しい…。この家系図を見れば、一定の時期が過ぎれば、いずれ王位を継ぐ家が『入れ替わる』ことは分かっているだろうに…。未練がましく玉座にしがみつこうとするなんて」

「誰だって、自分の代で王冠を奪われたくはないさ。まぁ…この複雑な家系図を見れば、さすがにそろそろ、何らかの対策は必要だと思うけどな」

どちらかの王家がずっと王位を継ぐ、とはっきり決めてしまうとか。

それだと多分両家共に納得しないだろうから、三代ずつで入れ替わる、とか。

まぁ…それも上手く行かないだろうな。「そろそろ入れ替わる時期だけど、お宅の家には今、国王を継げるような人がいないみたいだから、次の代もうちから出しますw」とか何とか言って、また余計な争いが生まれそう。

結局は…アシミムみたいに、短絡的な考えに…暗殺に…走るしかないのだ。
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