The previous night of the world revolution4~I.D.~
俺達は深夜に電車に揺られ、王都のど真ん中にある繁華街のビジネスホテルに向かった。

ここなら通信回線も入り乱れているし、そう簡単には特定されないだろう、とのこと。

ビジネスホテルの一室に入り、鍵を閉めてから。

「…本当に連絡出来るのか?」

俺は、ずっと気になっていたことを聞いた。

「さぁ…。やってみないと分からない。出来ないかもしれないな。出来たとしても、アシミムに俺達の動きがバレるかもしれない」

「…不味いんじゃないのか?それ」

「不味いけど、でも…アイズ先輩達は今、俺達の生死すら分かっていないんだぞ?」

…まぁ、そうだよな。

心配してくれているだろう…きっと。

「それに、アイズ先輩達と連絡が取れれば、ルティス帝国からの助力も得られるかもしれない。そんなに期待はしてないがな」

「…そうか…分かった。やってみよう」

「あぁ、やってみよう。これで連絡が取れれば良いんだが…」

ルリシヤは、古ぼけた電話機をコンセントに繋ぎ。

「…ルルシー先輩。つかぬことを聞くが、ルルシー先輩直下の準幹部には、嫁がいたな?」

「へ?い…いるけど?」

ルヴィアのことだよな?

「まだ離婚してないよな?」

「…してないと思うぞ?」

あのクランチェスカ夫妻が離婚なんて…まず有り得まい。

嫁に見捨てられたら、あいつ間違いなく首を吊るぞ。

「何でそんなこと聞くんだ?いきなり」

「ルルシー先輩。知っていればで良い。その嫁の携帯番号、教えてくれないか」

…何だと?

「…ルヴィアの嫁にかけるのか?電話」

「あぁ。そのつもりだ」

「…それはまた、何で?」

全然関係ないだろう。彼女は。

「アイズ先輩やシュノ先輩にかけたとして、もしこちらの通信が傍受されたら、最悪『青薔薇連合会』の通信網がズタズタにされる恐れがある。認めたくはないが、シェルドニアの…ヘールシュミットの情報戦の技術は、箱庭帝国やアシスファルト帝国とは訳が違う」

「それは、そうだが…。でも彼女は、マフィアとは無関係だ。それを巻き込むなんて…」

…ルヴィアが、最も望まないことに違いない。

ルヴィアはもとより、嫁を裏社会のいさかいからは遠ざけたがっていた。だからこそ、箱庭帝国の革命のときも…自分を犠牲にしてでも、嫁を国外に亡命させようとした。

それを知っていながら…彼女を巻き込むなど…。

「無関係だからこそ、彼女でなければいけないんだ。『青薔薇連合会』の人間とコンタクトを取ったことがアシミムにバレたら、ルレイア先輩だって…どうされるか分からない」

「…!」

…そうだ、ルレイアを…俺は、助けなければならないのだ。

どんな手段を使ってでも。

ルヴィアにとって、嫁が何より大事な存在であるように。

俺にとっても…ルレイアは、何より大事な…守るべき存在だ。

…済まん、ルヴィア。

帰ったら…無事に帰れたら、何度でも謝る。土下座もする。どれだけなじられようと、殴られようと構わない。

ルレイアを助けるには…こうするしかないんだ。

「…分かった。アドレス帳に、ルヴィアの嫁の携帯番号が入ってるから…」

何で俺が、ルヴィア嫁の番号を知っているのか、と思われるかもしれないが。

ルヴィアにもしものことがあったときの為に、一応聞いておいたのだ。

「分かった…。済まない。ルルシー先輩の部下に謝るときは、俺も一緒に頭を下げる」

「…あいつは嫁馬鹿だから、謝るだけじゃ済まんかもな」

首絞められてもおかしくないぞ。比喩でなく本当に。

「そのときは、一緒に地下室で拷問されようじゃないか。それでルレイア先輩を助け出せるなら、安いものだ」

…全くだな。
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