The previous night of the world revolution4~I.D.~
テレビ通話の後、午後からは、ドリンクを片手に大型スクリーンで映画を鑑賞した。

正直映画はいまいちつまらなくて、ちょっと退屈だったのだが。

さて映画を鑑賞した後、何をしようかと三人で話していた、丁度そのとき。




「…あ」

「…」

…出た。

例の、黒髪長髪なんちゃってガイドなシェルドニア人青年であった。

昨日はカジノに出没していたとのことだが、今日はシアタールームに現れた。

「何だか…よく会いますね、あなた」

「そうか?…偶然だろう。それに…同じ船にいるんだから、顔を合わせるのは珍しくない」

まぁそうなんだけど。

それにしても、よく会うような気がするんだが?

「それより…今日は『白亜の塔』には上ったか?」

あ?『白亜の塔』?

昨日行ったから、今日はもう良いかなと思ったんだが。

「行ってませんけど…」

「そうか…。この後、夕焼けの時間に上ってみると良い。絶景だぞ」

あー、そうなの?

確かに、地平線に沈む太陽が一望出来そうだね。あの展望台なら。

まぁ、考えておこう。

「そうですか。教えてくれてありがとうございます」

「船内のバーには?もう行ったか?」

今度はバーを勧めるのか?

「まだ行ってないですけど」

「こちらも行ってみると良い。ここのバーのシェルドニア古酒は、本国の名産だ」

ふーん…。そんなに自信あるのか。

癖になる味ではあるけど、そこまで美味しいとは思わないんだよな。あのお酒。

「そうですか。どうも」

「…」

シェルドニア人の青年は、何故か俺の顔をじっ、と見つめた。

…何?俺に惚れた?

「何か?」

「…いや。それだけだ。では」

彼は言いたいことだけを言って、さっさと何処かに行ってしまった。

…なーんか、変な人だなぁ。

「何の話をしてたんだ?」

シェルドニア語の分からないルルシーが、俺に尋ねた。

「んー?夕方に展望台上ってみると良いっていうのと…あと、バーにも行ってみろって」

「…随分世話好きと言うか…首を突っ込んでくる奴だな」

怪訝そうに顔をしかめるルルシーである。

ルリシヤも、

「他の人にも同じことを言ってるんだろうか?」

「…さぁ…」

それなら、ただの世話好きだが…。

もし俺達にだけ言ってるのだとしたら…。

いや…考え過ぎだとは思うが…。
< 50 / 580 >

この作品をシェア

pagetop