The previous night of the world revolution4~I.D.~
「…ん…?」

目が覚めたときには、すっかり日が暮れていた。

…あれ?

俺は一体…こんなところで何をしていたのだろう。

よろよろと起き上がって、ぐるりと辺りを見渡す。

…あ、そうだ。

ここは…展望台だ。『白亜の塔』なのだ。

シェルドニアの民族音楽が、低い音で流れていた。

俺はもしかして…展望台で寝落ちしてしまったのか。

なんてことだ。昔の俺ならいざ知らず。こんなところで寝るな。

一体何分、何時間寝てしまっていたのかは知らないが。

ルルシー、絶対心配してる。

俺は慌てて展望台を降りた。

そして、客室に戻ろうとした…その廊下で。

「あ、ルルシー」

「あっ…!ルレイア」

曲がり角で、ばったりと出くわした。運命の出会い。

更に、ルルシーの後ろには、ルリシヤもいた。

「あぁ、良かった。ルレイア先輩、ここにいたのか。やっぱり俺の仮面の勘は当たっていたようだな」

そうか。ルリシヤが見つけてくれたのか。

それは有り難い。

いつもなら、すかさず突っ込みを入れるはずのルルシーだが。

今日ばかりは、焦った顔で俺の腕をガシッ、と掴んだ。

「お前!こんな時間まで何処ほっつき歩いてたんだ。戻っても部屋にいないから、何処に行ったのかと…」

「ごめんなさい、ルルシー。実は展望台でちょっと寝落ちしてしまって」

「展望台で!?寝落ち!?貧血じゃないのか、お前…」

我ながら間抜けだとは思うが。

「貧血…ですかねぇ?血が足りない気はしないんですが…」

「熱は?頭痛くないのか」

ルルシーは俺の額に手を当てた。いやん。

「熱…は、なさそうだが…」

「船酔いか?ルレイア先輩。酔い止め飲んでおくか?」

うーん…。船酔いなのかなぁ?

風邪ではないと思うんだよな。多分…。

「そうですね…。酔い止め…飲んでおきましょうか」

「あるいは、二日酔いかもしれないな。慣れないシェルドニア古酒を飲んだものだから」

あぁ、成程。それはあるかも。

しかし、俺、ルリシヤほどではないが…そこまで酒に弱いとは思えないのだが。

昔の俺は弱かったが、今はむしろ、強い方だ。

シェルドニア古酒は確かに強いお酒だけど…。がぶ飲みした訳でもないのに…二日酔いとは。

…まぁ、体質に合わないお酒って、あるからな。

異国のお酒だし、余計に。

「大丈夫か、ルレイア。何か食べられるか?」

ルルシーが超心配しちゃってる。申し訳ない。

「いえ…。食欲ないので、このまま酔い止め飲んで寝ます」

「そうか…。あまり酷いようなら、医務室で診てもらおう」

『ホワイト・ドリーム号』には、万一旅行中に体調を崩したときの為に、24時間体制で医師が駐在する医務室が用意されている。

いざとなったら、そこで診てもらえば良い。

医者に診てもらうほど酷いとは思えないがな。

一晩ぐっすり眠れば、翌朝には少しは体調も戻っているだろう。





…と、思っていたのだが。




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