The previous night of the world revolution4~I.D.~
「いや、でも…二人は今、新婚旅行中なんだぞ?幸せの真っ只中じゃないか…。良くないことなんて…」

…何も起きるはずがないじゃないか。

「新婚旅行…どちらへ?」

「シェルドニア王国の豪華客船で…外国にいるはずだ」

「外国…。成程…それで、妙に遠くに感じたんですね」

何だって?

「あなたではなく、あなたの近くの人…恐らくルルシーさん達のことだと思うんですが…。何か良くないものが迫っている気配がします」

「ルルシーさん達に…!?そんな…」

あの二人に…危機が迫っているなどと。

あの二人なら、どんな危機でも跳ね返してしまうだろう、とは思うが…。

でも、フューニャがここまで心配するということは…。

フューニャもはっきりとは言わないが、恐らくかなり良くないものが見えているのだろう。

「まさか…。ルルシーさん達の身に、何か…」

…二人は、今…大海原のど真ん中。

ルティス帝国にすらいない。

何かがあったとしても、すぐに助けには行けないぞ。

「…まだ分かりませんよ、ルヴィアさん。二人共凄く遠くにいるので…。占う相手が遠くにいると、占いの精度は下がってしまうんです。だから…ただの思い過ごしである可能性もあります」

「…思い過ごし…」

「占いはあくまで占いなので…。それに、ルルシーさんとルレイアさんに関しては、ルヴィアさんほど新鮮な『素材』もありませんし…」

「そうか…。そうだな…」

…ん?素材?

素材って何?

「外国でも、連絡は出来るんですよね?身の回りに気をつけて欲しいと、メールだけでもしておいたら良いと思います」

「ん、あぁ…分かったよ」

新婚旅行中に、『嫁が占いで不穏なものを感じたらしいので、身辺には気を付けてくれ』なんて…水を差すようなことはしたくないが。

危険が迫っている可能性があることを黙っている方が、余程悪い。

言葉をもう少しオブラートに包んで、くれぐれも身の回りには気を付けてくれと、連絡を…。

「…ん?」

「?どうしました?」

「…メールが送れない」

送信ボタンを押しても、返ってきてしまう。

「…?ルルシーさんの携帯は、圏外なんでしょうか」

「いや、そんなはずは…」

箱庭帝国のような、通信体制の整っていない途上国には行ってないはず。

いくら海のど真ん中と言えど…メールくらいは問題なく届くはずだ。

事実、昨日…アイズさんとアリューシャさんが、海の上の三人にテレビ通話で話したと言っていた。

しかし、何度メールを送っても、どうしても届かない。

ルルシーさん宛てじゃ駄目なのかと、ルレイアさん宛てにメールを送ってみても、やはり届かない。

…何で?

すると、そのとき。

「うわっ!」

いきなり、携帯に電話が入った。
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