嘘八百
「何か良いことでもあったのか?」
「うん?」
「機嫌が良さそうだ」
穏やかに岬が尋ねた。止まっていたスプーンが動く。
「みさ……夷子、さんが」
「岬でいい」
「あんたが、生きてたから」
雪は頬杖をついて窓の外を見る。その横顔の美しいこと。暗くなった外で光る街灯が、瞳に反射していた。
「どういう意味だ?」
その質問に、雪が正面へ向き直る。
きょとんとした顔に、はあと溜息を零した。
「なんでもない。取り越し苦労だった」
「なんでもなくないだろ。わざわざ席まで来て」
「帰ります。お疲れ様でした」