嘘八百

「ホテルのケーキほどじゃないけど」

 蓋を開けて、蓋の方に一つ分ける。そちらを自分へ引き寄せ、もう一つを岬へ押す。
 フォークの袋を破いて岬はそれを渡した。

「いただきます」
「頂きます」

 手を併せて食べ始める。クリームの甘さが口に広がった。

「美味しい」
「それは良かった」
「ここで何かを食べるのは初めてだ」
「へー。わたしは夜勤明けにカップラーメン食べたりしてる」

 岬は窓の外を覗いた。いつもは、あちら側から見ていた世界だ。

 ある日急に、こちら側になることもある。

< 72 / 80 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop