嘘八百
「ホテルのケーキほどじゃないけど」
蓋を開けて、蓋の方に一つ分ける。そちらを自分へ引き寄せ、もう一つを岬へ押す。
フォークの袋を破いて岬はそれを渡した。
「いただきます」
「頂きます」
手を併せて食べ始める。クリームの甘さが口に広がった。
「美味しい」
「それは良かった」
「ここで何かを食べるのは初めてだ」
「へー。わたしは夜勤明けにカップラーメン食べたりしてる」
岬は窓の外を覗いた。いつもは、あちら側から見ていた世界だ。
ある日急に、こちら側になることもある。