嘘八百

 欲しいものは手に入った。
 いや、借りただけか。それを今、返している最中で。

「嘘。手には入ってなかった」

 掌を見せて雪は少し笑った。
 途端、店内の音楽が変わる。

「なんだっけ、この曲」
「きよしこのよる」

 その言葉にパッと雪が顔を上げた。

「もしかして名前」
「うん?」
「降る雪と書いて、(きよ)って読む?」

 大きな瞳を丸く開く。岬は吸い込まれそうなその瞳を見ていた。

「うん」

 ぱちくりと瞬く。

「あたった」

 嬉しそうにはにかむ岬に、雪は毒気を抜かれた。

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