嘘八百
「子供かよ」
思ったまま口に出ていた。
雪は自分が思っていたよりも穏やかな声が出て、自分で驚く。
「名前くらい普通に教えれば良いだろ」
「名前ほど個人情報はない」
「君は何に怯えてる?」
そう尋ねられ、雪がぴくりと目の下を痙攣させた。
「京橋も偽名だろ」
大正解。岬は見えていないようで、見えていたようだ。
「どうして怯えてるって思うの」
「本当のことを知られるのが怖いみたいだから」
「世の中なんて嘘で溢れかえってる」
雪はそう言って口を噤む。
「じゃあ本当のことには価値はないのか?」