嘘八百

 黙って岬はそれを聞いていた。

「それがどんなに幸福なことか。あんたは知るべきだ」

 名前を当てられただけで。

「君ってそんなに喋るんだな」

 岬を見ると、物珍しそうに雪を見ていた。
 はあ? と声に出す一歩手前、岬は笑う。

「面白い」
「面白かねーわ! んな話してねーし!」
「俺が幸せだからといって」

 笑いながら続けた。

「君に価値がないとは限らないんじゃないか?」

 口を開いたまま雪は止まる。

「俺は君がいるから今日ケーキを食べられたわけで」

 穏やかな顔で言う。

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