嘘八百

「君が居るから、今ここにいられる」

 その瞳が暗く揺れるのを見た。
 それを振り切るように雪は溜息を吐く。

「……ケーキくらい食べられるでしょ。それともお家柄が良いと厳しく言われるの?」

 自分がそうであるように、尋ねたからといって相応の返答があるとは思っていない。

「小学三年生までは母子家庭で、クリスマスは愚か誕生日もケーキが食べられないくらいには困窮してた」

 岬が答えるので、雪は驚いて黙った。

「夷子の家に行くのは、湧いて出た話で」
「いい。しなくていい」

 それを止めるのがワンテンポ遅れた。

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