僕の10月14日
次の日も・・・その次の日も・・・華菜ちゃんは来なかった。
僕は胸が張り裂けそうだった。そんなその日、僕は退院を言い渡された。そして、華菜ちゃんにそれを伝えなければと思い、悩んだ末に看護婦に聞くことにした。
「あの、ここのところ裏庭でよく話していた女の子で、心臓が悪くて入院していると聞いていたんだけど、どこの病棟に行けば会えるかな? この2日来なくて・・・僕の退院のこと知らせたいんだ。」
「個人情報があるからお教えするのは難しいかもしれないけど、ちょっと調べてあげる。名前は?」
「下の名前しか知らなくて・・・華菜さん。19歳で黒髪のロングでかわいい子です。」
「仲良くなったの?」
「そう・・・華菜さんももう直ぐ退院すると聞いていて、退院したらデートしようって話してて・・・」
「あらま。フフ・・・それじゃ、ちゃんと伝えないとね。」
「どうしたのか心配で・・・」
「退院前の検査かな? この病院入院患者多いからすぐわかるかどうか・・・心臓ということは・・・循環器内科かな・・・何人か仲のいい看護婦に聞いてみるね。」
「お願いします。僕明後日午前中に退院なので・・・」
「・・・時間ないわね・・・」
「よろしくお願いします。」
次の日も僕はベンチに行った。でも・・・やはり華菜ちゃんは来なかった。
― どうしたんだ? 心配で・・・心配で・・・狂いそうだよ・・・華菜ちゃん・・・
ついに退院の日が来てしまった。僕が退院の準備をしていると病室に先日の看護婦と見たことのない看護婦が来てくれた。
「あの、石田さん・・・」
「あっ、この前の看護婦さん。あの、彼女のことわかりましたか?」
二人は顔を見合わせ、一緒に来た看護婦が答えた。
「あの・・・その女性は白石華菜さんだと思います。」
「あっ、そうですか。白石さんっていうんですね。それでどこに行けば会えますか? 具合悪くなってしまったんでしょうか?」
「もう、いらっしゃらなくて・・・あの・・・実は、4日前の夜に急変されて・・・亡くなりました。」
「えっ・・・・・・・・・そんな・・・・・・ウソ・・・・・・あんなに元気だったのに・・・」
「はい。本当に急でした。最近は毎日楽しそうで、あなたのことも話していました。初めて彼氏が出来たって・・・退院したらいろんなところに行くんだって・・・それはそれは楽しそうに話していたのに・・・」
「嘘だー ああああ・・・・・・」
― 僕は抜け殻・・・僕はその辺りの公園に転がっている蝉の抜け殻・・・
― だれか、お願いだから・・・踏みつぶしてくれ・・・・・・