初恋成就は虹色雲のキセキ ~白馬の騎士は鳥かごの中の小鳥を溺愛する~
「ですから、これ以上徳永グループに手を出されると、それなりの対応をさせて頂くことになりますので、悪しからずご了承下さい、平久保社長」
「……グッ……」
ギリギリと悔しそうに歯を食いしばる平久保社長に、徳永くんは言葉を続けた。
「ああ、それから平久保社長、昔は大変お世話になったそうで」
「…何の事だ」
「もうお忘れですか?…栗原製薬と徳永で進めていた新薬の開発の件ですよ」
「…ハッ…何の事だか」
…え?それってもしかして、お母さんが言ってた…
え、共同開発って、徳永薬品さんとだったの!?
「栗原製薬の人間を買収し、私達のデータを盗ませましたよね、あなたの指示で」
「なっ…デタラメを言うな!若造が!」
…そのやり取りを見ていたお父さんが、驚きながら徳永くんに問う。
「真宙くん…それは一体どういう事なんだ?」
それには徳永くんは「それはまた後ほど」だけ答え、言葉を続けた。
「そして…栗原製薬がデータを盗んだというデマを流したのも…あなたですよね、平久保社長」
「何だって!?…真宙くん…本当かね…」
「こっ、こいつの言ってる事は全部嘘だ!それ以上言うと名誉毀損で訴えるぞ!」
「できるのであればどうぞ。しかし、こちらはあなたに買収された人間から直接話を聞いているのでね。どちらが嘘をついているのかは明確かと」
「…何だと……あいつを見つけたのか…」
「えぇ。海外に飛ばすとか、随分と手の込んだ事をされた様ですけどね」
「クソ……あと少しだったというのに…!」
そう言うと平久保社長は膝から崩れ落ちた。
「…栗原専務、これでよろしいですか?」
不意に徳永くんがお母さんに声をかけた。
「あっ……えぇ…ありがとうございます…」
あっ、もしかしてお母さんがやろうとしていた告発を、徳永くんがしてくれたの…?
徳永くんはお母さんの答えを聞いて安心したようにフッと笑むと、また平久保社長の方を向いた。
「その新薬ですが、実はあれからも栗原製薬と徳永で開発を進めていたんですよ」
「…は……」
「それが実を結びまして、この度承認され、漸く商品化に漕ぎ着けました」
「何…だと…」
そして徳永くんは会場に向かって話し出した。
「これもひとえに栗原製薬の皆さんにお力添えを頂けたからできたものと、徳永の一員として深く御礼申し上げます」
徳永くんが深く一礼すると会場からパチパチ…といくつかの拍手が聞こえてくると、それはいつしか会場全体に響くものとなった。
それが落ち着くと、徳永くんはもう一度会場に集まった両社の社員に語りかけた。
「今日僕がここに来たのは、栗原製薬と栗原さんご家族を助けるためです。…しかし、ヒラクボファーマの皆様には厳しい現実をお知らせする事になってしまい、それは大変申し訳なく思っています」
と、深く頭を下げた。