初恋成就は虹色雲のキセキ ~白馬の騎士は鳥かごの中の小鳥を溺愛する~
「麻里亜」
…あの時と変わらない優しい笑顔…
それだけで涙が出そうになる…
「…徳永くん…」
「探したよ。…何であの日…出ていったの?」
責めるでもなく優しく問われたから…素直に答えた。
「…徳永くんには…大事な人がいるって…聞こえて……だから…」
「やっぱりあの会話を聞いたんだね。でもね麻里亜、それは誤解なんだ」
「誤解…?」
「あぁ。…真那!」
振り返り、扉に向かって言うと、長い髪を後ろで一つに纏めたグレーのパンツスーツ姿の女性がホールに入ってきた。
「あの日うちに来たのはコイツ、双子の妹の真那。高校は県外に出ていたから、俺に妹がいる事を知る人は少ないんだ」
…双子の…妹さん?
「麻里亜さん、誤解を生んでしまってごめんなさい!…あの時、私が真宙に言った『大事な女』は麻里亜さん、あなたの事なの!」
バッ!と勢いよく頭を下げた真那さんはそう話してくれた。
「えっ?」
あの時、玄関にいた女性は妹さんで…
『大事な女』が私のこと…?
「真宙はずっと麻里亜さんの事が忘れられなくて諦めきれなくて、それを私も聞いていたから……あの時…まさかその麻里亜さんがいるなんて夢にも思わなくて…本当にごめんなさい!」
そして目線を上げた真那さんとお互いに顔を見合わせると、記憶の何かがピンと弾けた。
あれ…?
お化粧とか髪型で雰囲気は違うけど、もしかして…
「あの…7月に先斗町のおばんざいのお店で…」
「あっ!あの時の!? えっ、あなたが麻里亜さん!? あっ、そう言えば『マリアさん』て呼んでたわ…」
そう、一人旅で初日の夕食で入ったお店でお話してくれたマナさんが…徳永くんの妹さんの真那さんだったみたい。
「何?真那、麻里亜と知り合いだったのか?」
「ほら、いつだったか話したじゃない。あの日いつものダイニングで綺麗な人とお話ししたって」
「あぁ、言ってたな…で、それが麻里亜だったのか?」
「そう!…えー…びっくり!」
「本当にびっくりですね…」
「麻里亜、わかってくれた?俺に彼女はいない。無実だからな」
「うん…わかった」
なんだ…そうだったんだ……
心の中に閉じ込めてた醜く冷たい塊がゆるゆると溶けていくのを感じた。