訳アリママですが、敏腕パイロットに息子ごと深愛を注がれています。


 やはり家族になるなど無理だったのか。
 結局淪太郎にとって叶空は他人の子に過ぎず、自分の息子として愛することなどできなかったのだ。

 それでも陽鞠は淪太郎に強く異を唱えることはできずにいた。
 何故ならこの道を選んだのは陽鞠自身だから。

 淪太郎は何もしないが、不自由にさせないと言ったことだけは守ってくれていて衣食住だけは一般の家庭よりも贅沢をさせてもらっている。
 共働きが当たり前の世の中で、専業主婦ができるのは淪太郎の稼ぎのおかげだ。

 だが淪太郎がどれくらい稼いでいるのか陽鞠は知らないし、外で淪太郎が何をしているのか全く知らない。
 結婚した当初から夜泣きがうるさいからと寝室は別、徹底して叶空の面倒は見てくれなかった。

 そんな態度だが、外面の良い淪太郎は他人や両親の前では良き夫、父親として振る舞う。


「叶空がここまで元気に育っているのは妻のおかげです。僕も妻にはいつも支えてもらっていてとても感謝しています」
「淪太郎さんは本当に素敵な旦那様ね。こんな人と結婚できて、陽鞠さんが羨ましいわ」
「……ありがとうございます」


 名士である烙条家には様々なお客が訪ねてきて、ホームパーティーのようなものが開かれることは珍しくなかった。
 その都度夫を立てる良き妻を演じなければならない。


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