訳アリママですが、敏腕パイロットに息子ごと深愛を注がれています。


* * *


 三年後。


「……」
「……」


 食卓に響くのは、食器の音と咀嚼音。それ以外の物音は何も聞こえない。


「うわあああっ」


 いや、時折甲高く叶空の泣き声が響く。


「叶空、どうしたの?」
「あああああ……っ」


 泣きじゃくる叶空を抱き上げ、よしよしと背中を撫でる。


「うるさいな。早く泣き止ませないか」
「ご、ごめんなさい」


 淪太郎は叶空には見向きもせず、煩わしそうに吐き捨てる。


「母親のお前がもっとしっかりすべきなんじゃないのか?」
「……ごめんなさい」
「今日は遅くなる。夕飯はいらない」
「はい」
「っ、ぱぱぁっ!」
「うるさい!!」


 ピシャリと怒鳴られ、叶空はビクッと身を震わせる。そして再び大声で泣き喚いた。
 泣きじゃくる息子に一瞥もせず、淪太郎は出て行く。

 陽鞠は叶空を抱きしめ、行き場のない気持ちを胸の奥で燻らせることしかできなかった。


「まま、ぱぱはとあのこときらい……?」
「! そんなことないよっ!」
「うう……っ」
「パパもママも叶空のこと大好きだよ!」


 叶空にはそう言い聞かせているけど、きっと叶空自身もわかっている。自分は父親に愛されていないのだと。


「うえ〜〜ん……」
「叶空……ごめんね」


 淪太郎が優しかったのは叶空が生まれたばかりの頃までだった。
 今ではこの有様、家事も育児も全て陽鞠に押し付け、叶空のことは煩わしいものと遠ざける。


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