訳アリママですが、敏腕パイロットに息子ごと深愛を注がれています。
叶空は陽鞠ではなく、永翔に似ている。
飛行機が大好きなこともそうだが、顔立ちも日に日に永翔に似てきていると感じる。
そんなところも淪太郎は気に食わないのかもしれない。
「あの、淪太郎さん」
ある日、いつもより早めに帰宅した淪太郎に意を決して頼み込んだ。
「もう少し叶空のことを気にかけていただけないでしょうか……」
「……」
淪太郎はスマホをいじっていたが、少しだけ顔を上げる。
「叶空、パパに嫌われていると思ってるみたいで、かわいそうで……」
「気にかける?」
淪太郎は冷たく言い返す。
「毎日金を稼いでお前たちを食べさせてやってるんだ。今の生活ができているのは誰のおかげだと思ってる?」
「それは、もちろん淪太郎さんのおかげです。でも、」
「チッ」
淪太郎は煩わしそうに大きく舌打ちした。
「陽鞠、お前は私に意見できる立場なのか? 一人きりで子育てなんて到底不可能だっただろう」
「それは……」
「誰との子かもわからない叶空を由緒ある烙条家の跡取りにしてやると言っているんだ。これ以上の誉れはないだろう」
「ですから、叶空はあなたの子として……!」
「黙れ!!」
大声で怒鳴られ、陽鞠は思わず縮こまる。
「叶空は跡取りとして必要だっただけだ! それ以上でもそれ以下でもない!」