訳アリママですが、敏腕パイロットに息子ごと深愛を注がれています。


 懐かしい声に呼び止められた。思わず振り返ってしまった。


「あ……」
「やっぱり陽鞠だ……」


 パイロットの制服を着る彼は、三年前から変わらず美しかった。
 未だに心ときめく気持ちが抑えられないが、陽鞠は足速に立ち去ろうとする。


「待って!」
「……っ」


 叶空を抱き上げ、振り返らずに駆け抜けた。
 背後から「キャプテン!」と呼ぶ声が聞こえた。何となく永翔は追いかけて来ないだろうと思った。


「まま? あのしと、だあれ?」
「……知らない人」


 キョトンとしながら尋ねる叶空に笑って答える。


「それより叶空、お腹空いたでしょう? ハンバーグ食べよっか」
「はんばーぐ!」
「ハンバーグ大好きだもんね」


 空港内のハンバーグ屋で遅めのランチを食べる。お子さまランチのハンバーグセットを食べて叶空はご機嫌だった。


「ねぇ叶空、これから新しいお家に行くんだよ」
「あたらしいおうち?」
「そう、ママと二人でお引っ越しするの」
「……ぱぱは?」
「パパは来れないの」


 すると叶空はとても悲しそうな顔をした。
 泣いてしまうかな? と思ったが、叶空は小さく頷いた。


「ままとふたりで、いいよ」
「叶空……」
「ままといっしょがいい」


 まだ二歳の叶空がどこまで理解しているのかわからない。でもその言葉は陽鞠の胸を熱くさせた。


「叶空……ありがとう」
「まま、ないちゃめっ」
「泣いてないよ」


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