訳アリママですが、敏腕パイロットに息子ごと深愛を注がれています。
芽衣に案内してもらい、託児所へも挨拶しに行った。
叶空は最初こそ人見知りしていたが、託児所にある飛行機のおもちゃや絵本を見つけるとすぐに夢中になっていた。
「叶空くん、飛行機が大好きなんて将来有望ですね」
「未来のパイロットかもね」
「あはは、どうでしょう?」
「パイロットといえば陽鞠、赤瀬キャプテンと話してなかった?」
赤瀬キャプテン。
その名前を聞いてドキッとする。
「え? 誰のこと?」
「赤瀬永翔キャプテン。三十三歳にして機長を務めるエリートよ。おまけに絵に描いたようなイケメンなの」
「そ、そうなんだ」
「そういえば赤瀬キャプテンって元はエアウイングのパイロットだったって聞いたわ。もしかして陽鞠、知ってた?」
「……」
陽鞠は悩んだが、色々と助けてくれている芽衣には本当のことを話そうと思った。
誰にも言わないで欲しいと前置きして打ち明けた。
「実は……叶空の父親なの」
「ええっ!?」
「これは親にも内緒にしていることなのだけど……」
陽鞠はこれまでの経緯を話した。
三年前に永翔とそういう関係にあったこと、永翔が留学と同時に婚約すると聞いて身を引いたこと、その後に妊娠がわかったこと。
妊娠していることを承知の上で淪太郎と結婚したこと。
「これも本当は誰にも言えないんだけど、淪太郎さんは子どもが作れないの。でも跡取りが欲しくて私が都合良かったんだと思う。あの人にとって、叶空は家を継ぐための道具でしかないの」