訳アリママですが、敏腕パイロットに息子ごと深愛を注がれています。


 芽衣は少し考える仕草をしてから答えた。


「六条財閥の令嬢って言ったら、六条有紗(ありさ)副社長のことかしら」
「ふ、副社長?」
「ええ、RALの副社長ですごい方よ。有紗副社長が就任してから産休育休制度の見直しとか、女性の管理職を多く採用したりとか労働環境の見直しを積極的に行っているの」


 それまで主任止まりだった西田を部長に抜擢したのも有紗だという。
 社員一人一人の働きぶりを評価してくれるそうで、多くの社員から支持されているらしい。


「そういえば赤瀬キャプテンを引き抜いたのも有紗副社長って噂があったわね」
「そんなすごい方なの……」
「でも赤瀬キャプテンと有紗副社長が……って話、私は聞いたことないわね。まあ二人とも雲の上の人で関わりがないからだけど」
「そっか……」
「それにしても赤瀬キャプテンと言えど、陽鞠を弄ぶなんて絶対許せない!」
「いいの、私にとっては良い思い出だから」


 仮に本当に独身だったとしても、今更彼とどうなりたいなんて考えていない。
 思い出は美しいまま宝箱の中にしまっておきたかった。


「私は叶空がいてくれたら、それだけでいいの」
「陽鞠……」


 叶空が一緒なら他に何もいらない。
 三年前は意気地がなかったけれど、今はそんなことは言ってられない。

 叶空との幸せな日常と未来のために、前に進むしかなかった。


< 36 / 92 >

この作品をシェア

pagetop