訳アリママですが、敏腕パイロットに息子ごと深愛を注がれています。
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三年前、当時二十六歳だった水鏡陽鞠はLCCのエアウイングに勤めるグランドスタッフだった。
グランドスタッフは中学生の頃から憧れていた職業だった。空の旅をサポートしてくれるCAも華やかで素敵だが、旅立つ前に笑顔で送り出してくれるGSも魅力的な職業だと思った。
何より祖母の元へ向かうために初めて一人で飛行機に乗る時、航空券をなくしたかもしれないとパニクっていた陽鞠を助けてくれたのがあるGSの女性だった。
「お一人で不安なこともあるかもしれませんが、当スタッフが全力で空の旅をサポートいたします。安心してどうぞ行ってらっしゃいませ」
航空券が何とか見つかった陽鞠に対し、笑顔でそう送り出してくれたのだ。
それがとても嬉しかったし、心強かった。こんな人になりたい、GSの仕事がしてみたいと憧れた瞬間だった。
晴れて憧れの職業に就き、大変なこともあるがやり甲斐のある仕事で毎日が楽しかった。
「あっ、見て! 赤瀬さんよ!」
同僚の色めきたつ声に陽鞠もつい反応してしまう。
顔を上げれば、精悍とした佇まいの美しい男性が通りかかる。
赤瀬永翔、三十歳の若さで副操縦士を務める敏腕パイロットだ。
その優秀さはもちろんのこと、整った爽やかな容姿を持つ彼は全女性社員の憧れと言っても過言ではない。