訳アリママですが、敏腕パイロットに息子ごと深愛を注がれています。
結婚指輪は置いてきたし、旧姓で働かせてもらっているがまだ籍は抜いていない。
正式に離婚が成立するまではまだ人妻だ。
ダメだとわかっているのに、永翔の情熱溢れる真っ直ぐさに触れるとどうしようもなく惹かれてしまう。
(流されてはダメ、私にはやらなきゃいけないことがたくさんある)
あれから家に帰っていないし、連絡もしていないのに淪太郎からの連絡は一切なかった。
嵐の前の静けさとも思える程音沙汰がない。
(あの人が何を考えているのかまるでわからない……離婚届に気づいていないわけでもあるまいし。私のことなんて本当にどうでもいいのかな)
こちらから連絡してみようとしたこともあったが、芽衣には様子見でいいんじゃないかと言われた。
それでも離婚届にサインをしてもらわないといけないのだから、近々勇気を出して連絡してみるつもりでいた。
(なのに永翔さんにも呼び出されて……どうすればいいんだろう)
永翔の考えていることもわからない。
指輪をしていないことはさりげなく確認したし、独身なのは本当のようだ。
ではあの時の婚約の話は何だったのだろうか。
「……いや、考えても仕方ないよね。どっちにしろ私には関係ない人なんだから」
早く色んなものにケリをつけて、叶空と二人で穏やかに過ごしたいと思った。