訳アリママですが、敏腕パイロットに息子ごと深愛を注がれています。
初耳だった。元からRALのパイロットだったのなら今RALにいるのも当たり前だということだ。
「パイロットとして腕を磨いてこいってさ。副社長直々の命だったんだよね」
「副社長というのは、六条有紗副社長ですか……?」
「ああ、そうだよ」
「……お二人は婚約されていると聞きました」
「ええっ!?」
永翔の驚いた声に逆に驚いてしまう。
「なんで俺と有紗が!?」
「留学に行く前、そういう噂が流れていましたけど……」
「そんな噂が……参ったな」
永翔は頭をガシガシと掻いて肩を竦める。
陽鞠は有紗と呼び捨てにしたことを聞き逃さなかった。
「親密なご関係ではないのですか?」
「有紗は姉だよ」
「あ、姉っ!?」
思わず大きな声が漏れ出てしまう。
「そう、俺の両親は珍しくもないけど離婚していて俺は母親、有紗は父親に引き取られたんだ。だから苗字は違うけど正真正銘の姉だよ」
「じゃ、じゃあ、永翔さんは六条財閥の御曹司……?」
「そういうことになるのかな? 母が再婚して赤瀬になったから六条の人間と言えるのか微妙だけど」
衝撃の事実だった。永翔が副社長の弟であることは一部の社員しか知らないらしい。
隠しているわけではないが、社長や副社長の身内と知られると面倒だから聞かれない限り言わないようにしているのだという。
「そのせいでそんな噂が立っていたとはね」