訳アリママですが、敏腕パイロットに息子ごと深愛を注がれています。


 永翔はやれやれと肩を竦める。


「もしかして、俺がフラれたのは婚約すると思ったから?」
「フったつもりはありません!」
「俺はフラれたと思ったよ。ロスに行くけど半年で戻るから待ってて欲しいと言うつもりだったのに」
「なっ……!」


 あの時自分の方こそフラれるのだと思っていた。
 傷つきたくなくて自分から逃げたのに、どうやら全てが誤解だったらしい。


「陽鞠に好かれていると思っていたけど勘違いだったんだって結構落ち込んだ」
「そ、それは……」


 陽鞠はなんて答えたらいいかわからなくなって俯く。
 永翔は少し身を乗り出して陽鞠を見つめる。


「ねぇ陽鞠、今度は陽鞠のことを聞かせてよ。ワーキングホリデーに行くと言っていたけど、あれは嘘だった?」
「……」
「ずっと気になっていたけど、指輪はしてないよね。ネームプレートは水鏡だし、結婚はしてないの?」
「……永翔さんには関係ありません」
「あるよ。まだ俺には望みがあるのか、大事なところなんだから」


 永翔の少し薄みがかったブラウンの瞳が真っ直ぐ陽鞠を捉える。逃さない、誤魔化しは効かないと言いたげに。


「叶空くんは、俺の子だったりする?」
「違います!」


 反射的に大声をあげてしまい、周りにいた他の客が何事かとこちらを振り向いた。
 飛行機で遊んでいた叶空もびっくりして顔を上げる。
 陽鞠は「すみません」とぺこぺこし、咳払いしてから言った。


< 45 / 92 >

この作品をシェア

pagetop