訳アリママですが、敏腕パイロットに息子ごと深愛を注がれています。
「訳あって夫とは別居中ですが、結婚はしています。指輪は今修理に出しているところです」
「そうか」
「叶空は夫の子ですから」
叶空はあなたの息子です、と申し出るつもりは毛頭なかった。
実は六条財閥の御曹司だと知った時、やはりこの人は雲の上の存在なのだと思ってしまった。
どう考えても自分では相応しくない。
永翔にはもっと相応しい女性がいるはずだ。
永翔自身の幸せのためにも自分はいてはいけないと思った。
「わかった、変なことを言って悪かった。ただ、もしかしてという希望が捨てられなくて」
「希望、ですか?」
「叶空くんが昔の自分にすごく似ているから。俺も子どもの頃、ずっと飛行機のおもちゃを手離さなかったんだ」
「そうなんですか……」
「何となく顔立ちも似ているような気がしてたけど、俺の願望からそう見えるだけなんだろうね」
そんなことを言われると、胸がざわざわと騒いでしまう。
まるで叶空が自分の子だったらいいみたいな言い方。
叶空と二人で生きていくと決めた陽鞠の決意がグラグラと揺れ動く。
「お待たせいたしました、ハンバーグお子さまセットです」
その時、店員が叶空のハンバーグを運んできた。
飛行機の形をしたプレートの上に乗せられたハンバーグ、おもちゃまでついていて叶空は大喜びだった。
「ひこーき!」
「飛行機だねぇ。よかったな、叶空くん」