訳アリママですが、敏腕パイロットに息子ごと深愛を注がれています。


 叶空を見つめる瞳は本当に優しく、愛おしさすらも感じられる程で正に父親のようだった。
 淪太郎が叶空に向ける冷たい視線とは違う。


(永翔さんが本当のパパだって知ったら、叶空はどう思うのかな……)


 名乗り出るつもりはないくせに、そんなことを考えてしまうのは永翔と叶空が本当の親子にしか見えないからだろう。





「奢っていただいてありがとうございました」
「とんでもない。叶空くん、おいしかった?」
「おいちかった!」
「それはよかった」


 永翔はニコニコと微笑む。
 車で家まで送ってくれると言うので、流石にそこまで甘えられないと言ったが叶空が車がいいと言うので仕方なく甘えることにした。


「本当にすみません……」
「いや、いいんだよ」
「でも、永翔さんと会うのはこれが最後にします」


 永翔とは距離を置くべきだ。これ以上傍にいてはいけない。
 突き放すような言い方をしてしまったが、自分自身にも言い聞かせるためだった。


「……そうだね。流石に良くないと思うから、もう会わないことにするよ」
「えっ! やだ」


 しかしそこに異を唱えたのは叶空だった。


「とあ、もっとあそびたい」
「ダメよ、叶空。おじさん、いやお兄さんは忙しいの」
「やだ! とあとあそぶの!」


 いつもは聞き分けの良い叶空が珍しく我儘を言った。


「もっとあそぶの〜〜……」


 ついにぐずり始めてしまった。


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