訳アリママですが、敏腕パイロットに息子ごと深愛を注がれています。
連絡先を受け取ることを少しだけ躊躇ったが、もらっておくことにした。
「……ありがとうございます」
「それじゃあおやすみ。叶空くん、またね」
「ばいばい」
叶空は永翔に向かって小さな手をふりふりする。
永翔の車が見えなくなるまで見送った。
「お家に入ろっか」
「うん」
何だかとても濃い一日だったなぁと思う。
久しぶりに永翔と話したが、彼は全く変わっていなかった。
優しくて誠実で時々強引だけど何故か嫌ではない、陽鞠が憧れ愛していた永翔のままだった。
正直なところ、叶空があんなに永翔に懐くとは思っていなかった。
永翔も叶空のことを可愛がってくれている。
(絶対有り得ないのに、夢見てしまう……永翔さんと家族になれるかも、なんて)
そんな未来を望める立場ではないというのに。
現実をしっかり見て明日からまた頑張ろう、そう思っていた時だった。
「ようやく帰ってきたか」
陽鞠たちが借りているアパートの部屋の前に立っていた人物の姿に、一瞬で凍り付いた。
「り、淪太郎さん……っ」
「遅かったな。今まで何をしていたんだ」
淪太郎の低くて冷たい声、睨むような双眸はいつも圧迫感がある。
陽鞠は震えが止まらなくなり、立っているだけでやっとの思いだった。
それでも叶空のことだけは離すまいと、抱っこしている力を強めた。