訳アリママですが、敏腕パイロットに息子ごと深愛を注がれています。
淪太郎が何を言っているのかまるで理解できなかった。
要するに淪太郎は金で叶空を買おうとしているのだ。
人の心がないと思っていたが、ここまでだとは思っていなかった。
ろくに世話もしないくせに、叶空を道具のように扱うことが腹立たしい。
自分がそれに応じると思われていることも悔しかった。
(淪太郎さんにとって私は、子どもを産む道具でしかなかったんだ)
唇を噛み締め、陽鞠ははっきりと拒絶した。
「あなたなんかに叶空は絶対に渡しません」
「何だと?」
「お金はいりません。もう二度と私たち親子に関わらないでください」
「生意気な……今まで誰がお前たちを養ってやったと思っているんだ!」
淪太郎は怒りを露わにさせて怒鳴った。
あまりの勢いと迫力に叶空は泣き出してしまう。そんな叶空をお構いなしに、淪太郎はむんずと掴んで陽鞠から奪おうとした。
「叶空!!」
「来い! お前はこっちに来るんだ」
「うわああああああ」
「叶空を返して!!」
「ままああああっ」
泣き叫ぶ叶空を絶対に離すまいと淪太郎にしがみつく。
殴られても蹴られても絶対に離すものかと力を込めた。
大声で泣きながら手を伸ばし、母を求める愛する息子の体に手が届いたその時だった。
「――その手を離せ」
淪太郎の腕を掴み上げ、今まで見たこともない怒りを滲ませて淪太郎を睨み付けたのは、先程帰ったはずの永翔だった。