訳アリママですが、敏腕パイロットに息子ごと深愛を注がれています。
「な、なんだお前は」
突然知らない男が現れ、動揺したのだろう。
一瞬の隙を見逃さず、永翔は叶空を奪い返す。その反動で淪太郎は後ろに倒れ込み、情けなく尻餅をついていた。
「叶空くん、大丈夫?」
「おいたん……」
「ほら、ママだよ」
「あ……」
陽鞠はすぐに叶空に駆け寄り、力いっぱい抱きしめた。
「叶空……!!」
「ままああああああっ」
「ごめんね叶空……」
陽鞠も泣きながら叶空をしっかりと抱きしめ、叶空の温もりを確かめる。
何故永翔が戻ってきたかなんて考えている余裕などなかった。
ただ叶空が無事だったことを噛み締めるだけで精一杯だった。
永翔は陽鞠の肩を優しく抱き、「立てる?」と陽鞠に尋ねる。
「俺の車に乗って」
「え、でも……」
「何があったかわからないけど、子どもから母親を引き離そうとするなんてろくでもない」
すぐ近くに車が停めてあったので陽鞠の肩を支えながら、永翔は陽鞠と叶空を後部座席に乗せた。
永翔は運転席に乗り込む前に淪太郎に向かって向き直り、ギロリと睨み付ける。
永翔の睨みに一瞬怯んだように顔を引き攣らせたが、淪太郎は負けじと喚き散らす。
「何なんだ貴様は! 俺は父親だぞ!」
「だとしたら最低だな……」
「部外者は引っ込んでろ! 叶空は俺の子だ!!」
「違う、叶空は俺の息子だ」