訳アリママですが、敏腕パイロットに息子ごと深愛を注がれています。


 陽鞠はぽつりぽつりとこれまでの経緯を説明した。
 永翔が留学先で結婚するという噂を耳にし、離れる決意をしたこと。その後に妊娠したこと。
 利害の一致で淪太郎と結婚したこと。軽蔑される覚悟で全てを打ち明けた。


「……軽蔑したでしょう?」
「どうして?」
「私は最低な女です。はっきり言ってお金目的で好きでもない人と結婚しました」
「……」
「しかもその人には都合の良い道具扱いされて、挙句に叶空を奪われそうになって……母親失格だと思うでしょう?」
「陽鞠は悪くない」
「私が悪いんです!」
「そんなことない!」


 永翔は陽鞠を両肩を掴み、真っ直ぐ陽鞠の目を見て語りかける。


「陽鞠が母親としてどんなに頑張っているか、どんなに叶空くんを愛しているか、叶空くんを見ていればわかるよ」
「っ、わたしは……っ」
「誰が何と言おうが、悪いのはあの男だ。陽鞠を利用して叶空くんを奪おうなんて、人がすることじゃない」
「う……っ」
「陽鞠にも叶空くんにも絶対手出しはさせない。二人のことは俺が守る」


 永翔の力強く直球な言葉は弱った陽鞠の心に届き、揺るがせた。


「ずっと前から陽鞠だけを愛してる。俺には陽鞠だけだ」


 そして永翔の愛の言葉は、傷ついた陽鞠を優しくも激しく包み込む。
 三年前から聞きたかった言葉、でも確かめるのが怖かった言葉。自分に向けられることなどないと思っていた言葉だった。


< 58 / 92 >

この作品をシェア

pagetop