訳アリママですが、敏腕パイロットに息子ごと深愛を注がれています。
恋愛に憧れる気持ちがないわけではない。
友人に誘われて合コンに参加したこともある。それでも何かが違う、と思ってしまって楽しめたことはなかった。
ひょっとして自分は恋愛に向いていないのかもしれない。
誰かのことを好きになることができないのかもしれない。
それでも自分には仕事がある、と思い込もうとしているのは完全な強がりだ。
(私もいつか誰かと恋をして――結婚したりするのかな)
一つだけ言えるのは、その相手は赤瀬永翔ではないこと。
それだけは確かだった。
*
ある日のシフト終わりのことだ。
「赤瀬さん! これから一緒にお食事に行きませんか?」
CAと思われる女性たちが永翔を取り囲んでいるのを見かけた。
やっぱりモテるんだなぁと遠目に見ていた時、不意に永翔と目が合った。
気のせいかもしれないと思った。だが、永翔は陽鞠を真っ直ぐ見つめてこう言ったのだ。
「陽鞠! お待たせ!」
(えっ!?)
永翔は陽鞠に向かって真っ直ぐ歩いてくる。
陽鞠は戸惑いが隠せない。親しげに自分の名前を呼ばれるなんて思ってもいなかった。
「すまない、今日は彼女と予定があるんだ」
「えっ!?」
身に覚えのない話にいよいよ困惑してしまう。
「さあ、行こう」
「えっ、ちょっ、あのっ」
戸惑う陽鞠を引っ張りながら、永翔はその場を立ち去った。背後から陽鞠に突き刺さる鋭い視線が痛かった。