訳アリママですが、敏腕パイロットに息子ごと深愛を注がれています。


 それから何となく陽鞠のことを目で探してしまうようになっていた。
 陽鞠は常に笑顔で楽しそうにGSの業務を行っている。

 目立つようなタイプではないが、永翔には陽鞠だけが雑踏の中に咲く一輪の花のように思えた。

 やや強引に食事に誘い、一対一で話をしてみたらもう短い時間の中で「陽鞠と結婚したい」と思っていた。
 まともに会話したのはこれが初めてだというのに、我ながら何を考えているのだと思った。

 永翔は結婚に対して特に願望はなかった。
 両親が子どもの頃に離婚しているから、結婚に対して良い印象はない。姉の有紗は独身主義だし、永翔自身もそこまで興味がなかった。
 子どもたちがこうなったのは自分たちのせいだと父も母も嘆いていたので、「結婚したいと思う人がいたらするよ」と適当なことを言っていた。

 まさか本当にそう思える人と出会えるとは思っていなかったし、ほとんど初対面でこんな気持ちになるとは思っていなかった。

 もっと陽鞠のことが知りたい、もっと陽鞠と一緒にいたい。
 陽鞠のことが欲しい。

 誰かに対して執着的とも言える思いを抱いたのは、これが初めてだった。

 陽鞠は戸惑いながらも永翔を受け入れた。
 初心な彼女を優しくリードしたいという理性はあったが、実際どうだったかはわからない。
 ただ目の前の彼女に夢中だった。


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