訳アリママですが、敏腕パイロットに息子ごと深愛を注がれています。
四、溢れ出る愛
あれからしばらくが経ち、陽鞠の日常は驚くほど穏やかなものになっていた。
まず離婚届は無事に提出して受理され、晴れて独り身となった。戸籍も水鏡に戻ることができた。
離婚することを両親に話すとかなり驚いたが、離婚に至るまでの経緯を聞くと陽鞠や叶空の身を案じてくれた。
時間を見つけて一度帰国するとも言ってくれた。
両親は今まで気づかなかったことを詫びたが、今はとても晴れやかな気持ちになっている。
烙条家から解放されたという清々しい気持ちでいっぱいだからだ。
もちろん淪太郎や烙条家から連絡があるかもしれないとは思った。
永翔が言っていたように、再度家まで乗り込んでくるかもしれないと充分に用心していた。
しかし一週間経ってもそんな気配はない。
まるで陽鞠のことなど忘れてしまったかのようだ。
叶空のこともあそこまで執着していたのに、もうどうでも良くなってしまったのだろうか。
それとも六条財閥という後ろ盾を恐れているのか。
尊大な態度を取るくせに小心者な一面もある淪太郎のことを考えれば、大いに可能性はある。
それにしてもたった一度の脅しで屈したのだとしたら、何とも情けない話だと思った。
おかげで平和な日常を送れているわけだが。