訳アリママですが、敏腕パイロットに息子ごと深愛を注がれています。


 先程よりも大きく心臓が飛び跳ねた。振り返ると、もう永翔の背中しか見えなかった。


「〜〜っっ」


 どうしようもなく嬉しくて心が震える。
 永翔に会えたことも、この後時間を使ってもらえることも。


(やっぱり私、永翔さんのこと……)


 ダメだダメだと思っていても、気持ちを押し隠すことはできない。
 やっぱり自分は永翔が好きなのだと思った。


「水鏡さーん、上がらなくて大丈夫ですかー?」


 由夏が呼びに来た。


「あ、もう上がります」
「……なんか顔赤くありません?」
「えっ!? 気のせいですよっ」


 怪訝そうにする由夏に「お先に失礼します」と言ってそそくさと彼女から離れる。
 こういうことには敏感そうな由夏に気づかれては困ると思ったから、勘付かれる前に立ち去った。





「叶空! おかえり!」
「ままーっ!」


 迎えに行くと、叶空はとたとたと駆け寄ってくる。ぎゅうぎゅう抱きしめると、叶空も小さな手で抱きしめ返してくれる。


「叶空、この後パイロットのお兄さんが会いに来てくれるんだけど」
「ぱいろとのおいたん!?」


 それを聞くと叶空の表情がパァッと明るくなる。


「会いたい?」
「あいたい!」
「お兄さんのこと、好き?」
「しゅき」


 叶空に「もうパパには会えない」と話した時、「わかった」と言った。その後に「ぱいろとのおいたんには会える?」と尋ねた。
 陽鞠は悩みつつ、「飛行機に乗って帰って来たら会えるよ」と返事した。


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