訳アリママですが、敏腕パイロットに息子ごと深愛を注がれています。


 全て言い終わる前に唇を塞がれる。
 待ち侘びていたと言わんばかりに舌が唇を往復する。三年ぶりに味わう永翔からの口付けは、腰あたりにゾクゾクとした痺れを走らせた。


「んっ、ふ……っ」


 あっさりと唇をこじ開けられてしまい、侵入を許すと舌が舌を絡め取る。
 三年ぶりで息継ぎの仕方など忘れてしまった。元夫とは手を繋いだことすらなく、こんなにも濃密な触れ合いは久しぶりだった。

 ダメだ、と脳内で警鐘が鳴っているのに彼の舌の動きに合わせ、ぎゅっと彼の服を握りしめる。

 角度を変えて何度も何度も唇を貪られ、頭がぼうっとする。彼から与えられる甘美な口付けに夢中になっていると、いつの間にか横抱きにされてベッドの上に運ばれていた。


「陽鞠、愛してる」


 陽鞠の頬を優しく撫で、これ以上ないくらい甘く囁かれた愛の言葉に自然と涙がこぼれた。


「私も、愛してる……」


 愛したのは永翔だけだった。
 何度忘れようとしても、心の奥底ではずっと永翔を想っていた。


「陽鞠……」
「あ……」


 ベッドの上で抱き合い、互いを求め合う。全身を這う舌も指先も全てが優しい。
 慈しむように陽鞠に触れ、何度も甘い言葉を囁かれる。かと思えば激しく求められ、心も体も彼に溺れ切っていた。


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