訳アリママですが、敏腕パイロットに息子ごと深愛を注がれています。


* * *


 翌日、その日はバタバタしていた。荷物が届いていないという客がいたため、対応に追われていた。
 何とか見つかったはいいものの、お迎えの時間には大幅に遅れてしまった。


「叶空! ごめんね!」
「あっ、まま」
「お疲れ、陽鞠」
「あれ、永翔さん?」


 保育所の隅っこで叶空は永翔と遊んでいた。今日も飛行機をしっかりと握りしめている。


「急だけど陽鞠に来て欲しいところがあって。叶空くんも一緒にいいかな?」
「え? はい。叶空も大丈夫?」


 叶空はこくりと頷き、永翔に向かって手を伸ばす。手を繋ぎたい、ということのようだ。
 気づいた永翔はニッコリと微笑み、叶空の小さな手を握りしめる。
 叶空はすっかり永翔に懐いていた。

 永翔の車で連れて来られた場所を見て、陽鞠は驚く。なんとそこはRALの本社だったからだ。
 本社に訪れるのは面接と入社手続きの時以来だ。


「さあ行こう」
「えっ、えっ!?」
「大丈夫」


 そう言われても本来子連れで入る場所ではないため、緊張してしまう。
 叶空を抱っこして言われるがまま永翔について行くが、何故呼ばれたのか検討もつかない。

 エレベーターで昇りながら、一体何を言われるのだろうと嫌な予想ばかりしてしまった。


「失礼します」


 永翔がノックしたドアにかけられていたプレートには「副社長室」と書かれていた。
 それを見た途端、陽鞠の心臓が飛び出そうになる。


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