訳アリママですが、敏腕パイロットに息子ごと深愛を注がれています。


 今何時なのかわからないが、機内は消灯していて乗客は寝ている時間帯だ。
 叶空も寝ていたが、突然むくりと起き出した。


「……おしっこ」
「おしっこね、わかった」


 叶空の手を引いてトイレに向かった。手を洗って席に戻ろうとした時、白金に呼び止められる。


「赤瀬様、少々よろしいでしょうか」
「はい?」
「どうぞこちらへ」


 よくわからないまま白金に案内された場所は、なんとコックピットだった。
 操縦席には永翔と副操縦士が座っている。永翔は振り返ることはできないが、ガラスに微笑む永翔の姿が映っていた。


「陽鞠、叶空」
「ぱぱ!」


 叶空は嬉しそうにパパに駆け寄ろうとしたが、陽鞠が止めた。


「ダメよ、叶空。パパお仕事中だからね」
「ごめんな。本当はダメなんだけど、二人の様子が気になってしまって」
「キャプテン、隣で惚気話ばかりするんですよ」


 顔だけこちらに向けて、副操縦士が軽く会釈した。


「コーパイの鷹宮(たかみや)です。赤瀬キャプテンにはお世話になっております」
「妻の陽鞠と息子の叶空です。こちらこそお世話になっております」
「あかせとあです」
「叶空くん偉いなぁ! ちゃんと挨拶できるなんて」
「そうだろう? 俺の息子だからね」


 振り向いていないのに、永翔が得意げな顔をしているのが想像ついてつい笑ってしまう。


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