訳アリママですが、敏腕パイロットに息子ごと深愛を注がれています。
* * *
「叶空! 陽鞠!」
「ぱぱー!」
パリに到着して二日目。ようやく永翔と合流した。
叶空は「危ないよ」という陽鞠の声を無視して真っ直ぐパパの元に駆け寄る。
「お待たせ、叶空。飛行機どうだった?」
「たのしかった!」
「良かった」
「あのね、とあね、おおきくなったらね、ぱぱみたいなぱいろとになるの」
叶空はますますパイロットになる夢を膨らませたようだ。ホテルに着いてもその話ばかりしていた。
永翔は目を細めて優しく微笑む。
「そっか。いつか一緒に飛行機に乗りたいな」
「うんっ」
そんな父と息子の姿を見ながら、陽鞠は思わず目頭が熱くなっていた。
もう永翔と家族になって一年が経とうとしているのに、まだ夢の中にいるんじゃないかと錯覚してしまう。
こんなに幸せでいいのかと、疑ってしまいたくなる。
「陽鞠? どうかした?」
「ままー、はやくー」
二人の声にハッとした。さりげなく涙を拭ってから、愛する夫と息子の元へと駆け寄る。
「今行く!」
この日のパリは晴天。抜けるような青空が広がる快晴だ。
正にウェディング日和といったところだろう。