資格マニアの私が飛んだら、なぜか隣にこどもと王子様が寝てました




現れたのは、もちろんエインだった。


「おはようございます、エナ様。それにノア。あと兄上も」

「……暇なのか」


最早お決まりの登場パターンに、ユーリが頭を抱える。


「嫌だなぁ、これだから、恋愛せずに女性を手に入れてきた王子様は。最愛の人に逢うのに、時間がなかったってことはないでしょ。何を割いてでも、作るものだよ」

「俺も今、そうしているところだ。こんな朝早くに、女性のしかも兄の妻に身支度もさせず、部屋に押し入るとは。お前こそどういうつもりだ」


痛烈な皮肉――これは皮肉なんだろうか――を第一王子に浴びせておきながら、自分への攻撃にエインは肩を竦めるだけだ。


「だーって。確かにね、エナ様は今のところ(・・・・・・)兄上の奥様だし。エナ様が許したなら、兄上が触れようと僕が怒るのは筋違いでしょ。分かってはいるけど、嫌なものは嫌なんだもん。まあでも、それは初夜だからってことで諦めた」

「……何を言っている」


言っていることはめちゃくちゃだけど、当たりだった。
結局キス以上のことは起きなかったけれど、つまりエインは今の私とユーリの関係は、これが初めてだろうと言いたいのだ。


「ね、エナ様。僕、思ったんです。第一王子に見初められて、しかもあれよという間に妻になっていて、兄上に抱かれる前に僕のところに来るのは、さすがにできなかっただろうなって。可哀想に……貴女に与えられた選択肢は、あまりに限られすぎてます。お辛いですよね」

「……エイン」


抱っこしているノアくんの耳を塞ぐと、新しい遊びが始まったのかと勘違いしたのか、きゃっきゃと楽しそうな姿が目に痛い。


「兄上は、きっと国の為なら貴女を売る。犠牲にだってするでしょう。でも、僕なら絶対にそんなことはあり得ない。おまけにあの国王じゃ、ノアだってどうなるか分かりませんよ。だから、一度でいいから僕と過ごしてくださいませんか。きっと、お分かりいただけると思うんです。愛情の違いを」


それは、ユーリの希望や気持ちじゃない。
ものすごくアンフェアな状況から生まれる、事実でしかないのだ。


「立場上、仕方のないことだと思いますか? うん、貴女がそう考えるのは、分かってました。だから、こういうのはどうです? ねぇ、兄上。もしも、エナ様が僕と一日過ごしてくださったら」


――僕の秘密だけでなく、兄上が知らない国王の秘密も教えて差し上げます。


「焦ってるでしょう? 現状、いくら兄上が躍起になって犯人を探しても、闇雲にそこらじゅう叩いたって埃は舞うばかりで、誰から出てきたのかなんて分かりはしない。僕の話を聞いて事件解決とはいかないかもしれないけど、それでも方向性くらいは決まるかも」


得るものが多い交換条件だ。
まさか、この件に国王が関係しているとは。
城内で敵味方が測れないことは感じていたけれど、それが国王も同じだなんて。
そういえば、ユーリは国王はノアくんにとっていい祖父ではないと言っていたけれど、ノアくんにも当たるかもしれない状況で弓矢を撃たせるだろうか。
息子であるユーリを狙ったりする?
するとしたって、それが国益にはならないはず。


「この後、兄上はお忙しいだろうから。……返事を」



――一体、ノアくんの周りで、何が起きているの。









< 35 / 69 >

この作品をシェア

pagetop