獅子の皮を被った子猫の逃走劇
「えっと、獅音くん……?」
「えーっと、これには深い訳が……」
深い訳もくそもないよねこの状況!
思わず自分にツッコんでしまった。
上に宙ぶらりんのままのウィッグを見てみると、柵にその髪が絡まっていた。
いやいやいや、短い髪のウィッグで絡まるとかどんな奇跡なんだ。
急ぎ頭をフル回転させて言い訳を考えるけど、全然いいのが思い浮かばない。
実はロン毛でした!!とか?
流石に無理がありすぎるかー!
立ち上がって、ふぅ、と一つ息を吐く。
諦めて全部話すしかないと悟ったのだ。
「希良ちゃん、今まで嘘ついててごめんなさい。ぼく、ううん私は実は女の子なの」
「女、の子?」
「うん。訳あって今まで男装してた。だまそうとしたつもりはなかったけど、ごめんなさい」
私なりに、誠心誠意込めて謝った。
今希良ちゃんがどんな表情をしているのか分からず、その怖さに顔が上げられなかった。
ーーこれで嫌われちゃったらどうしよう。
そんな不安が過ぎった。