獅子の皮を被った子猫の逃走劇



 「いった⋯⋯」


 頭がズキンと痛み、それで意識が覚醒した。

 あれ、私どうしてたんだっけ。

 自分のおかれている状況が分からなくなって、周りを見渡すと、そこは教室のようだった。

 教室は教室でも知らない教室。

 机とか壁とか、何となく龍ヶ崎と似てるけど違くて。
 何となくこの場所は嫌いだなと思った。


 段々、頭がスッキリして思い出してきた。

 そうだ。
 バラされたくなければ来いって呼び出されて⋯⋯殴られたのか⋯⋯。

 後頭部を触ってみると、血が固まっている感触があった。

 血が出るほどの力で殴りつけられたらしい。

 仮にも女の子の頭に傷をつけるなんて……。

 そう私を殴った人に怨念を飛ばしていた時にそいつは現れた。


 「あ、お姫様のお目覚めだ」
 「……あなたは確か虎月の、?」
 「へえー覚えてたんだ」


 声がした方を見れば、いつぞやの顔が。

 今も、あの時も。

 目の前の男、虎月の総長は表情や口調は柔和そのものなのに、鳥肌が立つような何かを発している。

 怖かった。

 罠だと気づいていて飛び込んだのは私なのに。




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