アオハル・サーキュレーター
俺は再び差し出された薬を口に含んだ。そして、すかさず白髪の男の細い腕がペットボトルを口元に持ってきた。
俺はそれを口に含んで、薬を服用した。
「すぐには効かないと思うけど、とりあえず横になっていていいよ。なりたいか、なりたくないか。それを聞かせてほしい。キミは両手足をロープで縛られているんだから、自分で横になるのは、少し難しいんじゃないかな? まあ、できないことはないと思うけど。ボクの助けは必要かい? どうだい?」
「あ、いや、大丈夫」俺はゆっくりと時間を使って、身体を横にした。
「俺は、さらわれたの?」
「うん。これはボクの落ち度でもあるんだ。あのビジネスホテルに素性がよくわかっていないマッサージ嬢の出入りを許していたんだからね。でも、もう大丈夫だよ。今さっきキミに睡眠薬入りのビールを飲ませたマッサージ嬢の居場所が特定できたって連絡が入ったからね。今頃、始末屋が始末して、掃除屋が死体を処理。ああ、そうそう。それを運ぶ仕事をヤヨイに依頼したんだ。運び屋と言ったら、やっぱりヤヨイが一番さ。彼女は真面目だよ。決して誇れるような仕事ではないのだけれど、彼女は誇りをもってやっているように思えるんだ。キミも少しは気づいているんじゃないかい? まあ、それはわからないけど、とにかくヤヨイは仕事を上手くやってくれると信じているよ。でも、これはキミたちの仕事ではなくて、ヤヨイの仕事だから、キミの取り分は0さ。そこは悪く思わないでくれよ」
「あんたも、裏稼業の人間……なのか?」
「裏稼業……ねえ。そうだね。一応そうなるかな。元締めってやつさ。会社で言えば社長。プロ野球で言えばオーナー。競馬で言えば、馬主だし、鍋パーティーで言えば、鍋奉行ってところかな」
そう言って、男は立ち上がって、白髪の癖のある部分を細い指で摘まんだ。
「まさか、あんた……」
「まだ、時間はあるね。もう少し話さないかい? ボクは久しぶりに出てきて、人との繋がりに飢えていたんだ。だからって誰でもいいわけじゃないよ? キミとお話してみたいんだ」