アオハル・サーキュレーター
「俺は、最近、恋人の起こした火事からヤヨイに救われました。でも、火事がなくてもヤヨイは元々、俺のことを祖父と名乗るヤクザの男のところに運ぶつもりだった。ここまではわかります。でも、この世界に飛び込んだのは俺がヤヨイに殺されるか、相棒になるかの選択肢を勝手にはじき出して、後者を選んだ。この行動は俺が決めたことだ。だから、サトミとか言う人……おそらくサトーちゃんのことだ。サトーちゃん……うん? でもヤヨイは俺を運ぶなんて仕事。いや、運ぶっていうのは、その、あんたの依頼した方の運ぶ仕事のことで……まさか、ヤヨイは知らなかった? サトーちゃんはヤヨイにその話はしていないんだ。なんで話さなかったのか。俺はヤヨイに殺される可能性だってあったのに、それをサトーちゃんが想像しないわけがない。ということは……やっぱりヤヨイは知っていて、最初から俺を殺すことはなかったということになる。でも、見るところ、ヤヨイは俺をあんたの前に出すことをためらっていたように見える。サトーちゃん経由の仕事なのに。どうしてなのか、そこがわからない。どうしてヤヨイは、あんたの前に俺を出すことをためらったのか」
「うん、なるほどなるほど。大方合ってるよ。さすが、ボクが見込んだキミだね。でも、こうは考えられないかい? ヤヨイがボクの前にキミを出すのをためらったのは、ボクがキミを殺すかもしれないって思ったからだって」と言って、白髪の男は、黒いスキニーズボンの後ろポケットから銃を取り出した。
「見覚えあるよね? ベレッタM9。キミの銃だよ。ヤヨイがこんなものをキミに持たせたのが何よりの証拠さ。ヤヨイは頭がいいからね、思ったんだろう。ボクの前に運ばなくても、いずれボクはキミの前に現れることになる。そうなれば、キミはボクに殺されるだろうから、護身用として持たせたんだ。でも、ヤヨイはたしかに頭がいいけど、根本的なところがわかっていない。ボクはキミを殺すつもりでサトミにあんな依頼を出していない」
「じゃあ、どうして」
「だから言ったじゃないか。ボクはキミのことが気に入ったってね」
「気に入ったって……そして依頼を出したって……まさか、俺がまたヤヨイと出会う前から?」
「ああ、もういい。もううんざりだよ、キミ。この『茶番のような物語』はやめよう。つまらない設定なんか捨ててしまおう。ここからは、キミとボクの心の対話の時間だよ」