【電子書籍化】初夜に「きみを愛すことはできない」と言われたので、こちらから押し倒してみました。 〜妖精姫は、獣人王子のつがいになりたい〜
 どこか嬉しそうなカミルの表情からは、押し倒されたことに対する嫌悪感は読み取れない。獅子獣人にとって組み敷かれることは、屈辱的なのではなかったのか。思わず怪訝な表情になったルフィナに気づいたのか、カミルは小さく咳払いをして表情を引き締めた。

「あの、サラハからは獅子獣人は組み敷かれることを嫌うと教えられたんですけど……違うのですか?」

「そのあたりは個人の嗜好によると思うな。獅子獣人だとかは関係ない。あいつは、ルフィナに嘘ばかり教えてたみたいだな。閨教育をするという立場を利用して、俺とルフィナの仲を引き裂こうとしていたということか」

 ため息をついて、カミルはサラハに教わった内容を全て話すようにとルフィナに言う。

「それじゃあ、あの……初夜に一度しか抱いてくださらなかったことは? カミル様が肉体的に満足感を得られなかったから、なのでしょう?」

「……っと、それは」

 ぐっと低く唸ったカミルは、ぐしゃぐしゃと自らの髪を掻きむしる。しばらく何やら唸ったあと、ちらりとルフィナを見た。

「ルフィナ、体調は?」

「え? あ、おかげさまで大丈夫です。元気になりました」

「それなら良かった。さすがに体調の悪いきみに、こんなことできないから」

 そうつぶやいたカミルが、ルフィナの肩を掴むと体重をかけてソファに押しつけた。まるで押し倒されるような体勢に、抵抗も忘れてそのままずるずると身体を横たえてしまう。

「カミル様……?」

「あのな、ルフィナ。俺たちはまだ、ちゃんと性交を終えていない」

「へ?」

 思わず間抜けな声が漏れた。だが、カミルはそれに笑うことなく真面目な表情でルフィナを見下ろしている。
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