【電子書籍化】初夜に「きみを愛すことはできない」と言われたので、こちらから押し倒してみました。 〜妖精姫は、獣人王子のつがいになりたい〜
「ふふ、嬉しいです。でも実のところ『妖精姫』と呼ばれた理由には、あまり表舞台に姿をあらわさなかったことから来ているような気もしますけどね。なかなか目にする機会のない妖精のようだと」

「それでもきみは、妖精のように可愛いよ、ルフィナ」

 くすりと笑ってカミルが口づけてくるから、ルフィナは笑ってそれに応えた。
 

「サラハのしたことは」

 しばらくして、しっかりとルフィナを抱きしめながらカミルがぽつりと言う。顔を上げると、眉間に深い皺を刻んだカミルと目が合った。

「どこまで罪に問えるかは分からない。きみが受けた閨教育の内容を、証明できる者がいないからね。サラハはそこまで考えて、きみの侍女の同席を拒否していたのかもしれないけど」

「そう……ですね。きっとあの人は一般的な閨教育に関する講義をしただけだと証言するでしょうし、ほとんどの講義内容はその通りだったと思いますから」

 ルフィナがうなずくと、抱きしめる腕が強くなった。

「きみを深く傷つけたサラハを排除したい気持ちはある。だけど、彼女の父親は王の右腕と言われる宰相だ。証拠のない話でサラハを罰すれば、あの父親が黙ってないだろう」

「個人的な感情で、国の政にまで影響を及ぼすのは、私も望みません。もう私にもカミル様にも近づかないと約束してくれるなら、それで構いません」

「分かってる。もう二度とルフィナに近づけさせないと誓うし、俺もあいつと話すことはないと約束する」

 守るように抱きしめてくれるカミルの言葉に、ルフィナはうなずいた。

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